カッコいいひとになる方法
- 2013/05/06
- 15:23
うちの会社にはカッコいいと思える人がいない。
毎日わが社では夕方に魔の打ち合わせがあるのだが、決まり事の発表の他、社長お得意の無茶ぶり提案があると、社員はだいたい黙ってしまう。(私もだけど)
ワンマン社長の威厳が大きすぎ、何か意見を言うと社長にほぼ全てダメ出しされてしまうので、社員は思考停止状態になってしまうのである。
もっとロジカルに物事を進められないものだろうか。
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」山田ズーニー
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4569617360/ref=redir_mdp_mobile
この本は、文章の書き方の本である。
しかしただの文章の書き方の参考本だと思って読んでいると、とんでもない。
読んでいる人の考え方自体を揺さぶってくるのである。
プロローグから驚きのエピソードが紹介される。
このおかしな名前の山田ズーニー氏、どうやらベネッセの高校生対象の小論文対策を担当していた人らしい。
入試対策として文章を指導する企画で、普通の女子高生の文章の添削指導をすることにしたが、
「とりあえず一流企業に入りたい」「とりあえず大学進学」
のように600字の文章で「とりあえず」を頻発するこの子の身も蓋もない文章を2時間の指導で変えなければならないことになる。
この子の文章をたった2時間で変えることは不可能だろうと言われる中、ズーニー氏はその子の元へ行く。
おこなったのは、文章の指導というよりは、その子の立場を発見してもらうためのサポート。
いきなりの大きな問題に答えるのではなく、小さな問いを作っては答えてもらい、問いを作っては答えてもらいを繰り返し、本人がどう考えているかの確認作業をしていくのだ。
そのたった2時間の指導をした1週間後――
送られてきた文章は劇的に変わっていた。
表面的で当たり障りなく書いていた文章は、地に足がつき、自分の問題を真正面からとらえた、とても同じ子が書いたとは思えない前を向いた文章に変わっていたのだ。
私たちの多くは、書くための方法を知らないだけで、考える方法がわかれば文章は書ける。
ズーニー氏は伝える。
それから第1章、2章では、伝えるため文章の構成とその説明が例文とともに紹介され、これを抑えれば文として成り立つという方程式を紹介する。
第3章からは、さまざまなケーススタディが並べられ、場面ごとの文の書き方を学ぶことができる。
入試や就職で使える自薦文の書き方
ただ書くだけではない議事録
わび状の書き方
伝わるメールの書き方
やる気を引き出す依頼の仕方 等々。
それはロジカルで、文章の書き方の本というよりは、
生活していく上でも大事な物事のとらえ方、
相手を理解してコミュニケーションを取る方法
を改めて教わっているという感じだ。
で、いろいろなダメな例文と良い例文があるのだが、だいたいダメな例文の方は身に覚えがある。
ああ、これワタシだわーと軽く凹む。
学校では長いこと、「作文」という教育が行われてきて、私は「作文」の教育の中では、けっこう優等生だったのだ。
しかし、結論を一番最後に書くことになる「作文」の書き方では、実生活で役に立つ場面はあまりなく、かえって誤解が生まれることも事実。
会社での文書など、結論から先に書かなければならないのだが、そのような教育は残念ながら受けた覚えがない。
実際、会社でのメールに慣れている弟に、読みやすいように改行をたくさん入れ、肝心な要件を最後に書いていたら、読まれていなかったことがある。
「作文」の感情豊かで情緒を育てる教育は悪い事ではないのだろうが、実生活で書かなければならないのはもっと機能的な文章。
この本で指導しているような実際に使える文の教育をもっとしてくれればいいのに。
切に思う。
このズーニー氏、ただ良い文を書けとは言わない。うわっつらだけの小手先の技術などはバッサリ斬りおとす。
自分が何をしたいのか、自分の意見や根本思想をしっかりもつこと、自分を偽らないことを強く説く。
それが、この本からロックを感じさせる所以であると思う。
この本を読みながらずっと頭に浮かんでいたのは冒頭のウチの会社の打ち合わせである。
この打ち合わせ、論点が分からないまま、社長の意見ばかりが強くあり、その社長のちょっと匂わすクイズの、気分によって変わっていく正解を探っているのだから何も話せなくなってしまうのだ。
この本でいう、自分の根本思想(自分の根っこの思い)というのは社員たちにひとかけらもない。
この本の考え方を学ぶだけで、会社の打ち合わせももっとスマートに進むのではなかろうか。
そうすれば社員陣も、もっとカッコよく、魅力的に変わるに違いない。