在宅医療をちょっとだけ考える
- 2013/02/20
- 17:29
友人夫婦が経営する在宅ケア専門の個人病院を来年閉めてしまうという。]
本当にこれからの少子高齢化社会にもっともっと必要になる在宅医療。
なぜその病院を閉めてしまうのでしょう。
その理由とともに在宅医療について、そんなにえらそうな事を言える立場ではないのですが、少し書いてみようと思います。
友人はご夫婦で病院を切り盛りされています。
その病院は少し変わっていて、患者さんが一人も来ない、ただ看板に診療所と書いてあるだけの病院。近所の人には一体ここは何のお医者さんなんだろうと思われていました。
それはそうです。お客さんが来るわけはありません。
在宅ケア専門のお医者さんなんですから。患者さんが来る代わりに先生がお宅を訪問し、様子を伺います。
その病院のホームページの冒頭にこう書かれています。
『脳卒中後遺症 難病 老衰 末期がん
認知症 骨折 リウマチ 肺炎など
施設をすすめられたけど やはり自宅がいい
そんな家族の 自宅療養を支えます
それが 在宅療養支援診療所です』
なんだかんだ言っても、やはり自分家で療養したいと思うのは当然のことです。
家族がいる、長年暮らしたその家で暮らしたい、または死に面している人は我が家で死にたい、その思いを支えるのが在宅ケアです。
こちらでは患者さんの程度に応じて、基本的には月2回お宅を訪問。いつも奥さんが看護師として付いて行かれるので、医療の面は旦那さんが、メンタル面は奥さんがフォローしています。在宅で看護されているご家族のご負担は本当に大変なものなので、看護師である奥さんのメンタルのケア、相談が大事になるのですね。
なんの仕事にしても仕事というのは大変ですが、こちらの仕事また一層大変なお仕事です。
24時間365日、いつ何時患者さんから連絡があるかわかりませんし、お医者様は旦那さまだけですから、いつも気を張っていなければなりません。
さらに患者さんの家の中に踏み込む仕事なので、家庭のごたごたが見えたり、遺産のやり取りを垣間見たり、もちろん大変な病気を抱えた人が多いので、死と隣り合わせの精神的にも大変な仕事です。
患者さんの「家で暮らしたい」という思いを考えればこそできる仕事だと思いますが、ご自分でその大変な道を選択し、実際に在宅ケア専門の病院を開くという行動に移したご夫婦には、やはり頭が下がります。
あるとき、近くの総合病院のナースさん数人が訪問看護の勉強をしたいと言ってやってきたことがありました。いろいろと話をしていったのですが、なんにせよ医者の協力がいると、24時間対応できる医者がいなければナースだけでは難しい事を伝えたそうです。患者さんに深く関わるナースだからこそ、熱い思いで相談に来たのでしょうが、その時はナースさんたちの属する病院のお医者の了解を得られなかったようです。
ここまで来ると行政の力、バックアップが必要になります。
高齢者の増加による医療費増が問題になっている昨今、在宅医療が進むことで将来的には医療費の削減にもつながります。こんなにも熱い思いで患者さんに向き合っている人たちがいるのです。そんな人たちをちゃんとフォローしてくれるような政治になるよう望みます。
友人ご夫婦はなぜ病院を閉めてしまうのか。
そのような行政のバックアップの必要性、と、後継者の問題。
そう語っていました。
大変な仕事であるがゆえ、後継者がなかなかいないのです。
やはり、個人病院ではなく、総合病院のような大きな枠組みの中で組織として確立していかなければ難しいのかもしれません。
わたしも、もし死ぬなら家がいい。
そんな思いをサポートしてくれる人たちがいる。
そのサポートしてくれる人たちをまたサポートしていくシステムが構築されるよう、私も協力できるといいな、そう思っています。
たいした力じゃないんだけどね。